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エンドウマメ4

エレベーターのドアがあくと、そこは凛とした風情漂う和空間だった。
『こっちかしら』
叔母がすたすたと奥に進んでいく。
「なだ万雅殿」
きりりと和服を着こなしたお姉さまがそこに立っていた。
『いらっしゃいませ』
キャンプ場からそのまままっすぐやってきたみたいな私に、
きっちり三十度のお辞儀をした。
人を見下したような視線は、ちらりとも見せない。
さすが、客に対する礼儀をきっちりと叩き込まれた一流店の店員だ。
ちらっと横に目をやると、お品書きの看板が。
「おかゆ定食  二千二百円」
ひぇ〜
心は「気をつけ」状態になった。
何がどうなってそんな値段になるのかしらないが、
おかゆとみそ汁と総菜何点かでこの値段。
まさか、これをオーダーするわけではあるまいな。

席に通され、叔母は私に何も訊かず、
従業員に何かこそこそっと耳打ちした。
『かしこまりました』

ほどなく彼女が運んできたのは、あの「おかゆ定食」だった。
『こちらは梅のエキスにございます。お好みでかゆに垂らしてお召し上がり下さい。
こちらはお塩にございます』
『ははーっ』

焼き鮭は甘塩の加減が絶妙。
梅のエキスはとろりとしてほのかに梅の香がする。
半熟の卵をだし汁に落とし、
香の物すら逸品の味わい。
トーストとコーヒーと何やらの、いつもの手抜き朝食とは大違いだ。
叔母との話もいろいろはずんだ。
(続く)

by peteandfluffy | 2005-08-10 21:43 | 雑記  

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